デザイン思考の本質とこれからのマネジメント

デザイン思考の本質とこれからのマネジメント

デザイン思考、人間中心という言葉の本当の意味

流行りの文脈(コンテキスト)が出てきたかと、「デザイン思考」「人間中心」という言葉を避けてきた人も多いのではないでしょうか。さらに、デザイン思考と聞くと、デザイン関係の仕事をしていない人には遠く感じてしまうのかもしれません。

プロジェクトのキーマン、プロジェクトを推進する人、肩書きのある人が、このデザイン思考や人間中心という考え方を知ることで、世の中のプロジェクトはもっと動きやすくなり、もっと才能のある人が挑戦できるようになるのかもしれません。

このデザイン思考は、米国デザインコンサルティングファームIDEO社によって提唱され、スタンフォード大学やイリノイ大学などを中心に実践され、国内外で話題を集めています。

21世紀のプロジェクトを進める上で、きっと役に立つであろう「デザイン思考」や「人間中心」という考え方について紹介します。

デザイン思考とは

SEO対策ぽいブログで書かれているデザイン思考の説明とは

日本の多くの記事(ブログ系記事)では、デザイナーがデザインを考案する際に用いるプロセス思考を、ビジネス上の課題解決や未知の問題に対する解決のために活用する考え方と説明しています。 デザイナーの思考をビジネスに当てはめてデザイン思考というのは、デザイン思考を提唱したデザイン・ファームIDEOのTIM BROWN著「デザイン思考が世界を変える」に書かれてこととは、多少異なっている気がします。説明を簡潔にしすぎているように感じますし、解釈が少しズレているように感じます。

デザイン思考テストの「デザイン思考テストとは」の説明では、

デザイン思考テストは、イノベーション創発に必要とされるデザイン思考プロセス(共感・問題定義・アイデア創造・プロトタイプ・テスト)を 自ら高速で回し、事業を創造していく力を測定するためのテストです。このプロセスには、アイデアの創造と評価検証のプロセスが含まれます。

と紹介されています。つまり、デザイン思考は、イノベーション創発に必要とされ、プロセスとしては共感・問題定義・アイデア創造・プロトタイプ・テストがありますよということがわかります。

多くのブログでは、共感・問題定義・アイデア創造・プロトタイプ・テストの5ステップを中心に取り上げていることも多いです。

デザイン思考では、プロセスを型にはめきること自体を良しとはしていないので、「このプロセス通りにやらないといけない!」「5ステップでデザイン思考を実践する!」というのは、ちょっと違うように思います。

デザイン思考の5ステップ

デザイン思考の5ステップ

  • 共感(Empathize)/人間中心という概念の下でインタビューや観察により、顧客に共感します。

  • 問題定義(Define) /観察結果から、顧客が抱えている本質を見抜きます(洞察:インサイト)

  • 創造(Ideate) /問題を解決できるアイデアを大量に出し(発散:ディバージュ)、そこから一つを選び出します(収束:コンバージュ)。

  • プロトタイプ(Prototype) /決定したアイデアを顧客が体験できるようにプロトタイプを作成します。

  • テスト(Test) /顧客に体験してもらい、フィードバックをもらいます。

デザイン思考の本来の解釈とは

デザイナーは従来、制約の中で、使用シーンをイメージし、顧客のニーズを把握し、どのように実現するか模索し、デザインを行なってきました。 このデザイナーのスキルを利用したのが、デザイン思考であり、人間中心の考えであり、人間の持っているセンスを活かすアプローチです。

デザイン思考を習得するためには、センスを身につける必要でしょう。このセンスとは、喜び、美しさ、意義、社会性といった人らしい直感的な感覚を活かす能力が必要と言われています。

デザインとアートの違いからデザインの意味を再確認

仕事でデザインと全く関わりのない人は、デザインとは何か?デザインで何ができるのか?ということを考える機会はほとんどないでしょう。 混同しやすい表現として、アートがあり、アートは個人的な表現であり、技術の探究です。 デザインは制約の中で課題解決し、客観的な物事を捉えます。アートは限りなく制約を取り除いた中で自己表現を行い、主観的になっても問題となることはないと言えます。

アートとデザインの違い

デザイン思考の目的

企業は、人口減少社会における労働生産性向上、コモディティ化、先行き不透明な状態(VUCA:Volatility、Uncertainty、Complexity、Ambiguity)、グローバル化など従来型の仕組み、従来型の考え方では打破できない状況を感じているのではないでしょうか。

そこで期待されているのが、デザイン思考です。

デザイン思考は、人間や社会が直面する課題に対して、効果的な解決策を見出すことを目的としています。

このままではいけないのではないか?と気づき始め、できることから改善に取り組もうとしているが、なかなか抜本的な改革につながらないことも起きているように感じます。イノベーションをテクノロジーに頼って行おうとすると、既存の仕組みや戦略に対して最適なものを選ぶことに落ち着いてしまう可能性が高いです。

こういった悩みにもデザイン思考を知ることで、なぜ抜本的に変わらないのだろうかと見直すことはできるでしょう。

まずは、デザイン思考で考慮すべき重要なポイントである、「人間中心」「チームによる共創」「非線形プロセス」について紹介していきます。

デザイン思考の実践

デザイン思考はマインドセットであり、その重要なポイントである「人間中心」「チームによる共創」「非線形プロセス」について紹介していきます。

人間中心

デザイン思考は、人間を中心に考えた問題解決法です。

「どんなものが欲しいのか」「どんな問題を抱えているのか」「なぜ問題が起きていると思うのか」――顧客を観察し、共感を通じて本質的な問題を探る点に特徴があります。顧客の行動や気持ち、想い、考え方など、無意識レベルまで相手を観察し、相手の立場に立って、共感しながら潜在ニーズまでも見つけ解決策を見出すことが大切です。

例えば、バックオフィスの業務をこなしている人に「何が課題ですか」と聞いたら、「紙のやりとりが多い」と答えます。

残業の原因とは(デザイン思考)

そこで本当に紙をデジタル化すれば解決するかといえばそうでもないでしょう。

聞き方を変えて、「非効率はなぜ起きているか?」と聞くと、重複作業が多いなどのプロセスや標準化の課題が出てくるかもしれません。

非線形プロセス

イノベーションを歓迎するプロジェクトは、順序立てられたプロセスというより、着想(インスピレーション)、発案(アイディエーション)、実現(インプリメンテーション)を柔軟に行き来し、非直線的なプロセスであり、探究のためのプロセスでもあります。 無理に次のプロセスに移るのではなく、必要に応じて着想、発案、実現を反復します。

  • 着想はソリューションを探り出すための問題や機会を導き出すプロセス

  • 発案はアイデアを創造、構築、検証するプロセス

  • 実現はアイデアをプロジェクト・ルームから市場へ導くプロセス

チームがアイデアを改良したり、新たな方法性を模索したりする間に、プロジェクトがこの三つの空間を何度も行ったり来たりします。

行ったり来たりのデザイン思考のプロセスは振り回されそう…

デザイン思考のプロセスだけ見ると、どこまでも変更が許されて、時間がかかりそうですよね。

忘れてはいけないことが、デザインというものは制約の中で行うものであることです。 それは、スキル的に実現可能かどうか、予算的に可能かどうか、マネタイズできるかどうか、人々に受け入れられるかどうかです。

発注側も受注側もこの制約を理解していない限り、プロジェクトは上手く行かない可能性が高まるでしょう。過度に抽象的な依頼も、過度に制約の多い依頼も、既存のアイディアを使い回すチームしか生み出さないものになってしまいます。

過度に制約の多い依頼は、もちろんフォーマットありきで定型的に進めるプロジェクトであれば、問題ないでしょう。デザイン思考を活用する業務か、それともそこまでしないでいい業務かで、予算もメンバーも異なるでしょう。

チームによる共創

デザイン思考は、個人でなくチームで進めることで、組織の創造力を解き放つと言われています。 IDEO社には、「いかなる個人よりも全員の方が賢い」という有名な格言があり、クリエイティブな解決策を考える上で多彩なメンバーの力を活用することはとても重要と考えられています。

特定の分野を極め、専門的な知識や経験とスキルを蓄積し、これらを軸にして、その他の幅広いジャンルに対しても知見を持っている「T型人材」が必要です。このT型人材はスペシャリストとゼネラリストのハイブリッド型とも言えます。 専門分野の垣根を越えて、専門領域にとらわれない広い視野で活躍できる、新しい人材タイプとして期待されています。

マーケティングにデザイン思考を入れると?

マーケターは、エンジニアチームと協力して、製品開発プロセスの中心に、顧客を観察し、顧客のニーズを置くようにしましょう。

テクノロジー企業では、エンジニアチームが主体となり、新製品、サービス、機能の改善を開発しています。特定のターゲット顧客ではなく、すべての顧客にサービスを提供しようとします。アウトサイドインアプローチ(社会のニーズへのアプローチ)を採用はされにくい、確証バイアスがかかりやすくなります。

デザイン思考は、インサイトの見つけるプロセスを早い段階で開始し、マーケターを製品開発プロセスに参加させます。アジャイルで反復的なプロセスを維持し、内部リソースの制約ではなく、制約は顧客のニーズにあること考えましょう。

デザイン思考に必要な着想(インスピレーション)は、顧客とコミュニティからのインプットからヒントをもらえます。企業の望ましい結果に基づいて製品を設計するのではなく、ターゲット顧客のニーズに焦点を合わせて問題を解決するときに最高の製品が作成されるという哲学から始まります。

しかしらがら、絶えず変化する顧客の期待を考えると、従来以上にニーズに応えることは困難になっています。今日の人々は、コンテンツや情報にすぐにアクセスでき、当たり前のようにオンラインで買い物をし、翌日発送されることを期待しています。

デザイン思考を製品開発プロセスにうまく組み込むには、エンジニア、製品開発、およびマーケティングチーム間のコラボレーションとコミュニケーションを改善する必要があります。

人生にデザイン思考を取り入れたら

このデザイン思考は、人生にも取り入れることができるでしょう。

人生をプロトタイプと考えてみて、私たちは実験を行い、発見をし、視点を変えることができるかもしれません。なんとなく漂うのと、人生をデザインするとのは違うでしょう。 実験にはリスクはつきものかもしれません。 銀行の口座残高に捉われたら、実験という一歩目を踏み出せません。人生を予測することは難しいですし、非直線的なプロセスの中で探究を繰り返しにより、創造的に生きていけること、つまり目的意識を持つことが可能になるでしょう。

FLOURISHのデザイン思考とは

FLOURISHではデザイン思考を意識していたことはありませんでしたが、常に新しいものであるという意識を持つことにしていました。

常に新しいことが起きていると考えるメリットとして

  • 固定観念を排除し、バイアスをかからないようにしている

  • 新しいアイディアが生み出しやすい

  • 新しいテクノロジーや考え方をキャッチアップしやすい

  • ルーティン化しやすいマーケティングの実施で、改善点の気づきを得やすい

という理由から常に新しいこと、同じことはないという意識で対応しています。

常に新しいことが起きているという気持ちで仕事をしていたことは、デザイン思考にとても近いように感じました。

クライアント企業との協働において、スキルやアイディアを活用し、雑務だけに埋もれないようにするために下記のようにテキストとして方針を示し、理解していただく必要はあるのかなと感じています。

  • 少数精鋭でスキルとスピードを重視する

  • 実験を行い、リスクを覚悟し、能力を最大限に発揮する

  • 専門分野の垣根を越える

  • マイルストーンより探究のプロセスを重視する

  • 持続可能な手段を考える

  • センスを大事にする

  • 制約をお互いに理解し合う

実験を全く行わずにソリューションを販売しているマーケティング企業も多いのは事実で、弊社では実験可能なアイディアは実験していて、これは大きな強みであるように思います。

デザイン思考自体を社内組織の中で醸成していくには、まだまだ難しいこともあるのではないでしょうか。やっぱり新規事業やマーケティングなどの領域でプロジェクトを複数と経験してきた人材と、全く経験してきていない人材では、思考に大きな違いが生まれてしまいます。

デザインについて理解できる社内人材の育成を図って、社員のモチベーションを高め、製品開発プロジェクトにおいては、外部デザイン人材の活用も欠かせないと思います。

近年、少子化に伴い、優秀な人材を確保しにくくなってきている現状はどうしてもあるように感じます。

優秀な外部人材とコラボレーションするメリットは、外からの目で見るからこそ新しい発見があるということもあります。社外とつながり、良きパートナーを見つけることが、成功につながるでしょう。いかに求めているデザイナーと出会い、つながることができるかは、なかなか難しいことではあります。

FLOURISHでは中長期的なプロジェクトの支援、サービス企画、新規事業など幅広い対応が可能です。お気軽にお問い合わせください。

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