事例で考える著作権ーデザインについて

事例で考える著作権ーデザインについて

ロゴやキャラクターの著作権の帰属はどこにあるのが適切なのか考えたことはありますか?ロゴやキャラクター等のデザインは、事業の様々な場面で活用されるため、元々の製作物を組み合わせて利用されたり、キャラクターのデザインパターンを増やしたりする事はよくあります。

また、創作物の表現を保護する著作権の対象となるだけでなく、意匠権や商標権のような他の産業財産権の対象となる可能性もあります。この記事ではデザインの発注に関する注意点について解説します。

著作権の所在

ロゴやキャラクターの著作権は、動画の場合と同様に、著作権は製作者に帰属します

職務著作の要件も、動画の場合と同様で、下記になります。

  • 法人等の業務として制作した場合、以下の条件を満たすと著作権は法人等に帰属する(職務著作・法人著作 著作権法第15条

    (1)法人等の発意に基づいて

    (2)法人等の業務に従事する者が

    (3)職務上作成する場合で

    (4)法人等が自己の著作の名義で

    (5)公表するものであって(プログラムの著作物の場合は公表されなくてもよい)

    (6)その作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがないこと

発注者が企画、制作指示、資金提供を行ったとしても著作者とはなりません。

著作物の利用に関する注意点、他の知的財産権との関係

  • キャラクターの著作物は、利用用途に合わせた改変が必要になるケースが多い

この場合は改変や追加のデザインパターンの制作することになります。通常は、キャラクターを委託した企業に追加のパターンを依頼することになります。もしくは、改変や追加パターンの制作に関して、承諾を得て、オリジナルの著作者にチェックをしてもらうことも。

基本的には関係性上、委託した企業に依頼することがほとんどでしょう。別会社に依頼することでオリジナルのキャラクターを制作した企業の大きくモチベーションを下げてしまうこともあります。発注金額だけを見て、目先の利益でビジネスをするのではなく、本質的な目的を理解し、目的をどのように達成できるのかを自身でコントロールできる発注者になりましょう。

  • 例え著作権の譲渡を受けているとしても、切り抜きや合成が著作者人格権の侵害になる可能性がある

著作者人格権は移行できません。利用方法に関しては、許可をもらう必要があります。このようなトラブルを避けるためにも、著作権のマネジメントやブランドマネジメントを含めて広告代理店に依頼することが効率的でしょう。

  • そもそも納品を受けたデザイン自体が他の著作者の著作物の組み合わせであるケースもありうる(素材としての利用)

キャラクターをwebサイトやアプリ、チラシなどの紙媒体で使うケースなど、委託先が違うことは往々にしてあります。ブランドマネジメントまでロゴやキャラクターを制作した企業がやってくれる場合は、制作物のチェックを依頼しましょう。使い方が悪かったり、クオリティーが低かったりする場合は、NGが出されるケースもあります。マーケティング部門やプロモーション部門の担当者はそのような場合も想定し、調整を行うことがミッションでもあります。

キャラクター自体は改変しない場合であっても、契約に記載した利用範囲を超える場合などは著作者に一報を入れておくと良いでしょう。

  • ロゴやキャラクターとして利用する場合、著作権だけでなく商標権や意匠権等の対象となる可能性がある

商標権や意匠権等の権利を取得する条件は異なる=著作者が他の権利も保有というわけではありません。つまり、商標審査を通過して商標登録できたからといって、著作権侵害にあたらないという事にはなりません。(著作権を侵害していても商標登録できてしまう可能性がある)。

商標法第29条には、「商標登録出願の日前に生じた他人の著作権若しくは著作隣接権と抵触するときは、指定商品又は指定役務のうち抵触する部分についてその態様により登録商標の使用をすることができない」と定められています。

ロゴやキャラクターを使用したグッズ(Tシャツ等)は意匠権の対象となる可能性があります。意匠法第26条では、「その意匠登録出願の日前に生じた他人の著作権と抵触するときは、業としてその登録意匠の実施をすることができない」と定めています。

デザインは複数の権利で保護される可能性があるため、適切に利用できるように注意が必要です。

各種の権利を適切に管理するために、モノの創作の段階で、著作権以外の知的財産権を考慮した適切な契約を結ぶことが望ましいでしょう。

Q&A.企業のキャラクターの著作権は誰のものでしょうか?

一般公募、制作依頼、自己制作のいずれの場合も、キャラクターを創作し、表現した人(著作者)に「著作権」という権利が発生します。

  • 広告代理店やデザイン会社、イラストレーターに制作を委託した場合

キャラクターの制作を依頼する場合、原則として、キャラクターデザインの著作権は制作を受託したデザイン会社や広告代理店である法人もしくはイラストレーターに帰属します

そこで、キャラクターデザインの著作権を譲り受けるか否か、著作権の帰属や著作権の管理を明確化しておくために、キャラクターデザインの依頼者とキャラクターの制作者との間で「契約書」を結んでおくとよいでしょう。

基本的には、著作権を譲り受けることは一般的ではないと認識しておく方がいいでしょう。しっかりした広告会社やマーケティング会社では、著作権の管理やブランドマネジメントにおいてはプロなので、著作権を譲り渡すということは行わないのが通常です。

さらに、デザイナーは素晴らしい著作物を創作するために、日々の生活からアイディアを蓄え、それを表現するためにスキル習得も行なっています。その労力を発注側も想像し、どのようなパートナーシップを結ぶことが良いのかを考えましょう。著作権の目的である「文化の発展」のために、どのようにするのが良いのでしょうか。

企業としては都度お金をかけたくないから、著作権を買い取りたいと思ったとしても、それが双方にとって本当に良いことなのでしょうか。買取の方がお金を安く済んでいるのは、二次使用料を交渉されていないからということもあります。

自分の勤めている小さいな世界で、小さいな視界で考えず、取引先の成長と自社の発展をどちらも達成するにはどのような契約がいいのか考えましょう。会社と同化するのではなく、社会のためという視点を忘れないことが大切です。

契約時に考慮しておきたいこと

  • ロゴやキャラクターなどのデザイン関係の著作物は様々な利用形態が想定され、権利関係が複雑になりやすい

  • 自社の都合に合わせたデザインの改変等は認められないこともある

  • 将来に渡ってデザインの変更、発展が予想される場合には、ブランドマネジメントとして広告代理店やデザイン会社元製などと包括的な契約を結ぶことが自然である

将来のトラブルを避けるため、契約時に利用の範囲、期間に応じた適切な取り決めをすることが重要です。受託企業が制作するロゴやキャラクターが、将来的にどのような価値があり、どれだけ利用されるか考えましょう。

近年、注目されているSaaSのサービスでは、サブスクリプション形式の料金形態で提供され、購入すると毎月定額を支払い続けますよね。それと同じで、実はロゴやキャラクターもずっと企業が利用し続けます。ロゴやキャラクターの制作、ブランドマネジメントの適切なあり方、適正な価値とは何なのでしょうか。

ロゴやキャラクター制作に関しても、大手の総合広告代理店や名の知れたデザイン会社以外は、弱腰の交渉を行なっているのが現状だと思います。

SaaSなどから比べると極めて低い評価になっているように感じます。


著作権についての情報提供:佐藤翔(佐藤行政書士事務所

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